奈良市内の狭隘路線を行く




 2004年11月14日の旅日記です。

○現代っ子のワンステRJで48系統をたどる

 13時過ぎ、僕は近鉄奈良駅バス乗り場にいた。西行きのバスのりばには、あらかじめ待ち合わせていたもとさん(Mira-G「田舎道をゆく」管理者)の姿があった。

 今日は、もとさんといっしょに奈良市内の2つの狭隘路線をたどることにする。まず最初は、48系統・近鉄奈良駅-学園前駅間の路線に乗ってみよう。

 13:21発の[48]東坂経由学園前駅行きは日野RJだった。RJはワンステップ車でおそらくこれから奈交に入る中型車はこれが標準となるのだろう。

 48系統でこの車に乗るのは初めて。以前から何度かこの路線には乗ったことはあったが、いつも来るのはいすゞLTだった。そのため、僕の頭の中では、「48系統=LTが走る路線」というイメージができていたので、RJにのるとまた違った感じがして新鮮である。

 RJは音声合成放送車のため、南海太郎の放送は聞けなくて少し残念だが、バスが斜陽産業といわれる中、こうやって新車を導入していただける奈良交通の努力には利用者として感謝しなくてはならない。

 RJは僕たちを含めて数人の乗客を乗せ、近鉄奈良駅を発車した。音声合成車なので、ドアが閉まって動き出すと自動的に「動きます。ご注意ください。」という女声放送が入るのだが、運転者さんがあえて自らの肉声で、

「動きます。ご注意ください。」

と放送を入れていたのには感心した。さすが奈良交通、このあたりは教育が徹底しているのか。やはり自動放送の機械的な声よりもこうやって直接人が語りかけるほうが、温かみがあるし乗っている人の注意も向きやすいだろう。

 JR奈良駅で、数名乗車。座席が程よく埋まり、車内に活気があふれる。バスは、渋滞もなく順調に国道308号線を西進する。三条大路五丁目までは普通の片側1車線の道路なので問題ないのだが、その先が難所である。

「208さん、五丁目(乗降)ありです〜」 運転者さんが無線のやり取りを始める。208さんというのは、尼ヶ辻駅前に立っている誘導員のコールサインのようだ。

 三条大路五丁目で乗客を一人乗せ、交差点を直進しいよいよこの路線の難所へと入っていく。さっそく道幅はバス1台分となり、無線の誘導で尼ヶ辻駅前広場へと入った。踏切前にハンディ無線機を持った誘導員が立っていた。

 客扱いのあと狭い踏切を渡り、その先で県立奈良病院発尼ヶ辻駅行きのHRが無線の指示により対向待ちしていた。

「お待たせしました〜」

と無線でHRの運転者さんにあいさつし、RJはその先も続く狭隘路をすいすい走っていく。かなり忙しい。

 宝来から先の308号線は、一般車にもあまりおすすめできないのか、道路の標識には「×」印がつけられ、迂回するように案内されている。しかしバスはあえて、その「×」印のついている方向に進んでいく。  畑で近鉄奈良駅行きと対向、この先次の中町東坂まで、小さな丘を越えるため上り坂となりまたさらに狭くなり、本当にバス1台分すれすれとなる。RJはいったんその狭隘路の手前で停止。次々と来る対向車が途切れるのを待つ。

 やっと途切れたところで、発車したのもつかの間、対向車がまた1台飛び込んできた。地元の車で慣れているのか、すぐ横の路地に入って退避してくれたので、バスは後退することなく進むことができた。クラクション+挙手で対向車に感謝の意を表す。

 この道路、狭隘路なのに交通量が多く、対向車がけっこうやってくる。畑-中町東坂間は、狭隘路で見通しも悪く、非常に走りにくい。できればバスを通すために一般車は規制してほしいと個人的には思うのだが。

 東坂は2箇所停留所があり、まず308号線側に一箇所、そして右折した先にもう1箇所ある。308号線側は、奈良富雄線の富雄駅方面行き用、右折した先のものは赤膚山方面からの路線用のようだ。48系統は両方とも停車する。

 この先は、終点までずっと片側1車線が確保されている。実は、今は知ってきた国道308号線が一番の難所だったのである。

 藤の木台一丁目までまた上り坂となり阪奈道路を越えると下り坂、そして再び学園前駅の手前の学園南三丁目からまたのぼりとなり、この路線、意外にアップダウンが激しいことに気づく。藤の木台一丁目で一人乗車。このあたりは特殊運賃のバスも走っているため、運転者さんは、

「お待たせしました。学園前駅行き、整理券車です〜」

と案内していた。

 学園前駅の終点を目の前にして少し渋滞し、14時ごろ終点の学園前駅南口広場に到着。やはり奈良市内の住宅地を走る路線ということだけあり、乗客は途切れることはなかった。本当は道路事情を考えるとマイクロを走らせたいところなのだろうが、乗客がそこそこ多いので無理やり大型短尺や中型を走らせているのだろう。運転者さんも慣れているのだろうが、それでも気を使って大変だろう。



○日の暮れた六条山線をゆく

 近鉄奈良駅に戻り、奈良公園を散策したあと、近鉄奈良駅16:58発の[70]六条山行きに乗車する。ここも西ノ京駅付近がかなり狭い道路らしいので、どんなところなのか興味がある。

 70系統は春日大社本殿始発となっているが、この日は奈良公園内の交通規制により、東大寺大仏殿・国立博物館が始発となっている。

 近鉄奈良駅前の道路は車が多くやや渋滞気味。11月ともなるとすっかり日も短くなり、17時前だと薄暗い。

 16:58発の六条山行きは渋滞に巻き込まれて10分ほど遅れて到着。車両は先ほど学園前に行くときに乗ったRJ。シーズン中は近鉄奈良か県庁前始発にしたほうが渋滞のダメージが少なそうだが、バスの折り返しスペースの都合もあるだろうしなかなか難しい。そもそも車が多すぎて渋滞するのが根本的に悪いのであり、バス優先レーンの規制を強化して違法進入車両や駐車車両を徹底的に取り締まる努力が必要だと思う。

 私たちを含めて10名程度乗車。乗ったとたんに乗客から忘れ物の問い合わせがあって、運転者さんは無線を取って営業所と連絡を取ってあげていた。JR奈良駅でもさらに乗客が増える。

 途中の三条大路五丁目までは先ほどの48系統と同じ経路を走る。夕方になり、車が多くなっていて、走りにくそう。三条大路五丁目で左折し南に進路を変える。

 難読の都跡(みやと)小学校を通過。すっかり日は暮れて夜の雰囲気だ。日が暮れると一日が終わってしまった気分になるが、路線バスはそんなことを言っていられない。ひたすらダイヤに従って安全運行に努めるのみだ。

 唐招提寺東口に差し掛かると、先ほどの48系統の尼ヶ辻付近と同様に運転者さんが無線にかかり、西ノ京駅付近にいる誘導員に現在位置を報告したりする。

 唐招提寺東口を出ると次の交差点で右折。いきなり狭くなる。すっかり日が暮れて真っ暗になった田舎道をRJはゆっくり進む。唐招提寺に差し掛かり、左手に大木が生えていて道を狭くしている。道幅はバス1台分ぎりぎり。バス路線はこのあたりは一方通行になっており、帰りの近鉄奈良駅方面行きは違う道を通る。

 運転者さんは、大木を慎重に避けてRJをゆっくり進める。唐招提寺を出て次の角を左折。さらに一方通行は続き、薬師寺通過。ほどなくT字路の突き当たりとなり、これを右折するのだが、曲がった先も狭いので、無線の誘導にしたがって、ほかの車の通過を待って右折となる。曲がった先に自転車1台と歩行者一人がいたが、かなり狭いので自転車と歩行者は道の橋ぎりぎりのところの壁に張り付いていた。運転者さん、自転車に向かって窓を開けて

「すみませ〜ん」

と頭を下げていた。

 すぐ先が近鉄橿原線の踏切と西ノ京駅前広場。バスのりばのほうは、踏切を渡った先の信号を左折したところにあり、誘導員がその踏切を渡った先に待機していた。西の京駅(奈交は西の京と表記)では、電車からの乗り継ぎ客で、10名ほど乗車。立ち客が出る。

 先ほどの唐招提寺付近よりはましだが、対向車との行き違いに気を使う道幅は続く。電柱が出っ張っているので対向が来るたびに電柱の手前で停止して、車が途切れるのを待つ。普通車では気にならない道幅がバスだとなんと走りにくいことか。

 西の京駅から10分足らずで終点の六条山到着。六条山の停留所付近は道幅が広く、転回用に道路わきに若干スペースを作ってあるため、短尺車ならそのスペースを使ってそのまま転回することができるようだ。結局渋滞で15分遅れており、折り返し時間がないため一服するまもなく、RJは速攻行先幕を「[64]西の京駅」に変え、ぐるっと転回。そのまま17:40発の便として、乗客を1名乗せて出発した。




 奈良富雄線・六条山線と奈良市内の2つの狭隘路線を乗りあるいた小さな旅だったが、奈良県の道路事情の悪さを改めて認識させられた。

 しかし、そんな中でも懸命にバス運行に努力されている現場の運転者さん・誘導員の方々などには本当に頭が下がる思いである。

 また暇を見つけて、バスをせいぜい利用し、奈良交通を応援していこう。あらためてそう思った。




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