奈良交通休止路線の旅




 2003年3月30日の旅日記です。




 3月31日限りで、下記の路線が休止(小林行きは廃止)となった。(以下奈良交 通公式HPより引用)

・ 高田百済線[15]近鉄高田駅〜広陵町役場〜百済寺前
・ 桜井三輪線[34]桜井駅北口〜粟殿口〜三輪参道口
・ 八木桜井線[11]八木駅〜吉備〜桜井駅北口
・ 観音寺線[41]八木駅〜坊城駅〜観音寺町
・ 八木田中線[48]八木駅〜城殿口〜川原田中町
・ 名柄線[82]近鉄御所駅〜御所橋〜名柄
[87]忍海〜御所橋〜名柄
・ 小林線[81]近鉄御所駅〜新屋敷〜小林
・ 上市小名線[51]上市駅〜三茶屋〜小名
[56]新子〜中色生〜小名
・ 上市三茶屋線[50]上市駅〜三茶屋〜笛吹
・ 吉野山線[30]吉野神宮駅〜吉野神宮前〜吉野上千本
[31]吉野神宮駅〜吉野神宮前〜吉野中千本
[32]吉野神宮駅〜吉野神宮前〜吉野下千本
・ 吉野中学校線[文]吉野中学校〜吉野神宮前〜吉野上千本口
入野〜中色生〜吉野中学校
[文]新子〜吉野中学校、南国樔〜吉野中学校
・ 北野台住宅線[27]六田駅〜北野台口〜北野台五丁目
[28]下市口駅〜大淀バスセンター〜北野台五丁目
・ 御所今木線[90]近鉄御所駅〜吉野口駅〜今木上垣内


(引用ここまで)

 葛城・吉野管内の不採算路線が一気に整理される形になったようだが、この情報にはびっくりした。そこで急きょお別れ乗車をしようと思い立ち、2003/3/30午後から、上記から3つの路線を選んでいってきた。休止されると二度と乗れないかもしれないので、がんばっていってきた。本当は全部訪れてみたかったのだが・・・。

 バス路線が記入されている奈良県道路地図を見ながら、お読み頂くとなおわかりやすいかと思う。




○観音寺線(41系統・八木駅-観音寺町)

 1343発の観音寺町行きに乗るべく、1330ごろ、八木駅のバス乗り場に立った。ちょうど湯盛温泉杉の湯行きが出発するところであった。

 1340ごろ、県営福祉パーク塗装の日野RXが

  [41] 観 音 寺 町
     [坊城駅経由]

表示を出して乗り場に到着。かなり荒っぽいブレーキングで停車した。乗り込んだのは僕ともう一人男性の2名。その男性はデジカメで、バスを撮影していた。僕と同じ目的と思われる。

 発車すると、あら懐かしい、あの南海太郎の声で案内放送が流れてきたではないか。

「お待たせいたしました。ご乗車ありがとうございます。41系統、坊城駅方面、観音寺町行きでございます。次は橿原市役所前でございます。走行中・・・」

 橿原市役所前でおばあさん2名乗車。その後医大病院前でまたおばあさん1名乗車。バイパス工事中の四条交差点を右折。工事中で道の形が変則的になっているので、やや混雑気味。四条・五井・忌部と、交通量が多く流れが悪い24号線を、だらだら進む。

 コスモのガソリンスタンドの手前で左折。細い道へ入っていく。いよいよマイクロバスRXの本領発揮である。曲川南口でおばあさん一人下車。

 道は細いが、RXは、結構すいすい走る。ただ運転がやや荒っぽい気がしたが・・・。橿原バイパスをくぐりさらに細い道は続く。

 坊城駅では到着時、「ご乗車ありがとうございました。坊城駅でございます。」発車時、「お待たせいたしました。ご乗車ありがとうございます。41系統・・・」という放送が流れ、この路線では坊城駅は重要な停留所であることを感じさせる。ただ、乗降はまったくなく、通過であったが。

 橿原県営住宅前でおばあさん一人下車・・・させようとして、いったん出口を開けたのだが、ちょうど狭い交差点にバス停があり、またタイミングの悪いことに、その交差点から車が出てきて、邪魔する格好でとまってしまった。運転者、おばあさんに「降りるのはわかってるけどちょっと座って!!車のじゃまになってるから!!」おばあさんも最初意味がわからず、降りようとたくさんの荷物を抱えてじたばたしてたがやっと意味を理解して、いったん着席。バスを少し前へ進めて、改めて出口を開けておばあさん下車。このおばあさん、荷物を両手にいっぱい持っていたため、降りるのにも時間がかかり、結局トータルで3分ほど停車。一番前に座っていたお客さんがおばあさんが降りるのを補助していた。

 この間に、後ろに車が連なり、かなりじゃまになっていたようだった。路線開設当初は、車の量が少なく、このような細い道にバスが走ってもあまり影響はなかったし、乗客もそこそこいたのだろう。しかし、車が増えすぎた今、この路線では、バスが車の交通をじゃましてしまう形になってしまっているのである。いつの間にか、バスの本数は減り、乗客も減り、一日2往復、そして、ついに休止・・・。

 次のバス停で一番前に座っていたおばさんも下車。乗客は僕ともう一人八木駅から乗った男性の2人だけとなった。

 狭い道を南下し続け、西常門で右折。萩の本からやっと片側1車線の道となり、サンクスで左折して御所方面に行く県道を古作・観音寺町北口と進んで、あっけなく終点観音寺町到着。その観音寺町のバス停はというと、県道上にあるのではなく、観音寺町の集落にいく細い道に入ってすぐのところに隠れるようにぽつんと立っているのだった。終点まで乗りとおしたのは僕ともう一人の男性の2名だけだった。もし僕ともう一人の男性が乗っていなければ、乗客ゼロである。これが観音寺線の実態なのだろう。

 その道は、バスがとまると通れなくなるので、バスは、乗客を降ろすと、すぐバックして、広いところで方向変換し、県道のほうに出て行った。発車時間になると、またバス停に戻ってくるようだ。

 そのまま同じバスで折り返すのも面白くないし、はずかしいので、一町東口まで歩き、31系統で、橿原神宮駅までバスで戻った。

○八木田中線(48系統・八木駅-川原田中町)

 橿原神宮から八木まで電車で戻り、今度は、1548発の川原田中町行きを待つ。ある情報によると、観音寺町に行ったバスがそのまま川原田中町行きに充当されるらしいが、実際来たバスは、さっき乗った福祉パーク塗装のRXではなく、RHだった。どうも情報は平日の話のようである。

 5分前に来たバスに乗ってみたら僕一人。客待ちのあいだも結局ほかに乗車はなく。RHは僕一人を乗せて発車。南海太郎の声がむなしく車内にひびく。「おまたせいたしました。川原田中町行きでございます。次は橿原市役所前でございます・・・」さっきの観音寺町行きと違って、放送は簡潔だ。距離が短いからかな?

 医大病院前で、おばさん一人乗車。一番前に座り、運転者に話しかけた。

「川原田中(行き)なくなるの?」
「なんで?」
「不便になるわぁ・・・」

 この人は数少ない、八木田中線の常連さんらしい。車に乗れない人にとっては、本数が少なくても、路線バスは貴重な足なのだ。このおばさんは、バスの時間に合わせて生活してきたのだろう。運転者も、申し訳なさそうに、廃止後は、城殿口で吉野方面から来るバスに乗ってください、と応対していた。

 バスは、169号線を進み、城殿町の交差点で左折してすぐの所にある、城殿口バス停を通過。吉野方面行きの城殿口バス停は国道上にあるのだが、八木田中線だけ、なぜか別の所にバス停がある。

 道幅が狭くなり、城殿町通過。ポリテクセンターの最寄りである。飛鳥川につきあたり右折すると、飛騨町。ここでおばさん下車。八木田中線がなくなると、ここから国道まで1キロほど歩くことになる。お年寄りにはきついだろう。

 道の両側に家の軒が迫る狭い道に入り、少し走ると、やや道が広くなった所に出た。ここが終点の川原田中町だった。八木駅から15分ほどだった。

 バスは僕を降ろすと、ハザードを出して、ここで方向転換。バス停で待っていた男性一人を乗せ、すぐ折り返していった。

○桜井三輪線(34系統・桜井駅北口-三輪明神参道口)

 川原田中町から豊浦まで歩き、岡寺か橿原神宮行きのバスに乗ろうと思ったら、もうちょっとのところで間に合わず、仕方なく飛鳥資料館までとぼとぼ歩いて、桜井駅行きのバスをつかまえた。川原田中町から2kmほど歩いた。

 桜井駅で1時間ほど休憩後、最後に、一番の地元である、桜井三輪線に乗車することにした。ここの路線は、昔は大型短尺車が走っていて、1時間に1本は走っていたと記憶しているのだが、今は朝と晩の2往復だけになっている。ちなみに正月と初戎の日は、途中の三輪恵比寿神社前まで臨時バスが多数走る。34系統休止後も、臨時バスだけは毎年走るだろう。

 1806発の三輪明神参道口行きは、また乗客僕一人。しかも、さっき川原田中町まで乗ったバスだった。あのあと、八木駅まで帰り、桜井駅北口まで回送して休憩していたのだった。運転者ももちろん同じ。

 定刻に発車。テープは、またまた南海太郎。いい味を出している。この路線は、天理街道を経由せず、狭い旧街道を走る。粟殿口で右折。ヤマトー桜井店(旧桜井サティ)前を通り、左折して粟殿。初瀬川を渡って出口橋。以前大三輪病院(現在は田原本に移転し、国保中央病院になっている)があった頃は、ここから大三輪病院行きの路線が分岐していた。

 出口橋からは三輪の町の中に入っていき、道幅が狭くなる。しかもまっすぐではなく、狭い交差点を右左折するのである。普通車でも走りにくい道を、バスはゆっくりと慎重に進んでいく。三輪駅で広い道になり、169号線との交差点を超えると、終点の三輪明神参道口到着。結局終点まで乗降なし。ここに転回場はなく、バスは僕一人を降ろすと、西へ走り去った。多分大泉東口の奈良丸玉フーズ前で転回するのだろう。

 国道側のバス停に移動し、天理から来た桜井駅北口行きに乗り、桜井駅に戻った。

○乗り歩きを終えて

 本当は全部訪れてみたかったが、さすがに時間がなく、断念した。休止ということは、また事情によっては復活もありうるわけだが、まずその可能性は低く、実質的には廃止と同じである。

 郊外型の店が増え、買い物に行くのも、遊びに行くのも、とにかく車。バスに乗っているのは子供と年寄りだけ・・・。この日乗ってきた路線は、どれもJRのローカル線と事情は同じである。

 奈良県の交通事情は、果たしてこれでいいのだろうか。非常に考えさせられた。




 後日、葛城営業所の前を通ったら、休廃止になった路線から撤去されたバス停ポールが集められていた。なじみのある名前も多数ある。それを見つめていたら、何か複雑な気持ちになり、思わずため息が出た。合掌・・・。




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