桜井地区のローカルバス
(その1・[55]小夫<おおぶ>行き)




 2003年11月16日の旅日記です。

桜井駅南口で発車を待つ小夫行き
◆桜井駅南口で発車を待つ小夫行き



○ある日曜日

 「小夫に行こう」

 そう思ったのは、前日だった。市議会だよりに、奈良交通より市内3路線休止申し入れなどという気になる記事があったので、急に思いついたのだ。

 会社が休みにもかかわらず、気合を入れて早起きし、750ごろには桜井駅南口のバスのりばにいた。

○15年という歳月

 発車5分ほど前に、LTが回送で到着。南口バスのりばには、観光客の姿が10名ほど見られるが、800発の小夫行きに乗り込んだのは僕一人。

 しかし、本当に小夫線は久しぶりである。最後に乗ったのは、おそらく中学校のときだから15年ぶりぐらいだろうか。15年の間に、桜井の駅前もバスの顔ぶれもがらりと変わった。当時は、路線バスはすべて桜井駅の北口発着だった。南口はタクシーのりばのみで、古い商店などが立ち並び雑然としていた。駅舎は木造で、JRと近鉄の共用駅になっていて、北口が近鉄管理、南口がJRの管理だった。バスは、大型短尺だとBAやECM/EDM、大型になるとRCやBUが現役だった。

○国道165号線を行く

 800になり、結局僕以外の乗客がないままLTはのりばを離れた。駅前の通りを抜け、いわれ橋交差点から国道165号線にはいる。日曜日の朝ということで交通量は極めて少ない

 国道で片側一車線は確保されているものの、薬師町までは幅がせまく、大型車同士の離合には気を使う。道幅が広くなった難読停留所の外山(とび)で、後続車に道を譲る。

 宇陀が辻(うだがつじ)は、その名の通り宇陀に向かう166号線が分岐する交差点にある。交差点の名前も宇陀が辻だ。大宇陀・菟田野町行きはここで進路を変えて166号線に入っていく。

 宇陀が辻東口で、近鉄大阪線のガードをくぐる。くぐったあと右手をみると、大和朝倉駅が見える。慈恩寺・脇本・朝倉小学校前…と通過しながら、バスは淡々と165号線を走り続ける。時間的にも、これから桜井の市街地を離れて、初瀬(はせ)方面に向かおうとする人は少ないだろう。

 桜井東中学校前から初瀬地区に入り、観光用の駐車場が左右に見えると、初瀬観光センター前。長谷寺駅下の交差点を左折して、国道165号線と分かれると、初瀬の町の中へと進んでいく。

○長谷寺の門前町

 長谷寺駅(はせでらえき)も乗降なし。いよいよ、この路線の運行上ネックとなっている(と思われる)、初瀬の町だ。とりあえず長谷寺駅停留所を出ると対向車が来ないことを交差点のミラーで確認して右折。大型車1台ぎりぎりの幅を、LTはゆっくり進んでいく。昔ながらの街並みで、旅館や土産物屋などもありいかにも観光地という雰囲気だ。初瀬柳原で、少し道幅は広がり、普通車と対向できる幅になるが、せまいことに変わりはない。

 「バイパス 一方通行」の案内標識のある交差点を左折。LTは、急勾配の坂をあえぎながら登っていく。すぐくだりになり、左手に長谷寺の参道が見えると長谷寺前。

 右には、土産物屋が立ち並ぶせまい道が見えるが、帰りの桜井駅行きは、そのせまい道を下っていくことになる。幅は本当に大型車だとぎりぎりである。昔は、今通ってきた「バイパス」もなかったので、小夫方面行きのバスもこのせまい通りを走っていた。

初瀬の町内を行くLT
◆長谷寺前の狭隘路を行く桜井駅行きLT 幅ぎりぎりである(撮影:tokujiroさん)


○桜井の秘境(?)上之郷へ

 長谷寺前から終点までは自由乗降区間となる。道幅は相変わらずせまい。右手下のほうに大和川の源流である初瀬川を見ながら進む。降車指定地の初瀬浄水場前をすぎると、目の前に初瀬川をせき止めて作った初瀬ダムの堤防が現れる。ここから、急に道がよくなり片側1車線となる。初瀬ダムは1988(昭和63)年に完成したダムで比較的新しい。急に道がよくなるのは、このダムができたときに県道が付け替えられたためで、途中の和田あたりまでの県道はダム建設にともなう付け替え道路だ。

初瀬ダムの堤防
◆初瀬ダムの堤防


 ダムの堤防と同じ高さまであがると、初瀬ダム停留所。車窓右手にダム湖(まほろば湖というらしい)をみながらのんびり走る。

 ダムができる前、道路付け替え直前に、このあたりを自家用車にのせてもらって通ったことがあるが、そのころはすでに立ち退きは終わって、荒涼とした風景が広がっていたのを覚えている。周りが立ち退いた中、ぽつんと取り残された口の倉(くちのくら)バス停と古い待合所の小屋が印象的だった。現在は、口の倉という停留所は存在せず、降車指定地の口の倉橋がその代替となっているようだ。

まほろば湖
◆初瀬ダムのダム湖「まほろば湖」


 その口の倉橋を渡ると、ダム湖(というか初瀬川)は車窓左手に移り、落神権現前萱森口(おちがみごんげんまえかやのもりぐち・落神から改称)を通過。再び初瀬川を渡り和田へ。ここから上之郷(かみのごう)と呼ばれる地区で、1956(昭和31)年に桜井市と合併するまで磯城郡上之郷村だった名残だ。

 滝倉(たきのくら)までは、以前は区間便([56]滝倉→桜井駅と[文]滝倉-桜井東中学校)があった。滝倉の少し手前に学童専用の停留所ポールもたっているが、現在は使用しているのかどうか…。

 降車指定地の辻岡宅前を出ると県道沿いに民家がなくなった。というか、両側とも山である。県道は初瀬川に沿って作られており、川の流れにあわせて、くねくね曲がっている。それでも道路は以前より改良されており、ほぼ片側1車線が確保されており、初瀬ダム付近から小夫までの間だと笠山荒神口付近で未改良区間が残るのみだ。

 すっかり生徒数の少なくなった上之郷小学校前(降車指定地)を過ぎて、笠地区の入り口となる剣原。細い県道が分岐している。流用貸切のRUが1台停車中だった。

 小夫口で、改良された県道と分かれ、小夫の集落に入るために左折して旧道をいく。右手に奈良精工(旧奈良ミノルタ精工)の工場が建っている。どうしてこんなところに工場を建てたのかと思うが、ミノルタの経営が悪化する前は地元の人々の貴重な働き口になっていたという。

小夫の旧道を行く
◆小夫の旧道を行くLT


 LTは小夫の集落の中をとおるせまい旧道をゆっくり進み、終点小夫に到着した。上之郷郵便局の前が停留所になっている。近所には公民館や診療所もあり、かつては上之郷村の中心地であったことを思わせる。

 LTは、僕一人を下ろすと、転回するために、少し先にある転回場に向かって走り去った。

終点小夫
◆終点の小夫停留所 バスは少し先で転回


 時間帯と日が悪かっただけかもしれないが、僕がいなければ空気輸送になっていたところだ。乗りたくても乗れないダイヤと、少ない乗客という厳しい現実を目の当たりにすると、休止もやむなしなのか…というあきらめと、悲しい気持ちでいっぱいになった。

<一部の写真は、tokujiroさんより提供いただきました。ありがとうございます。>

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