冬の天川を訪ねて(その1・洞川温泉)




 2003年12月29日の旅日記です。



○冬の朝

 寒い!手がかじかむ!

 時刻は650過ぎ。自転車に乗り、耳成高校前へ向かっていたのだが、本当に寒い。昨晩から今朝にかけてよく冷え込んだ。これから向かう天川の様子はどうだろうか。

 耳成高校前705発の[64]八木耳成循環・内回りで八木駅へ。耳成高校前からバスに乗り込むと、暖房が心地よく効いている。自転車で寒風にさらされていたので、余計にありがたみを感じる。

 八木駅到着。数名の通勤客に混じってバスを降りる。簡単に朝食を取り、近鉄を乗り継ぎ、橿原神宮前800発の吉野行きで下市口へと向かった。

○いざ洞川へ!!

 835、下市口着。これから乗ろうとしている[2]洞川温泉行きの下市口駅発車は915で時間がある。このあき時間を利用して、岡崎町交差点そばにある南都銀行で別の用事を済ませた。行ったついでで、そのまま大淀バスセンター方面に徒歩で移動。途中で、洞川温泉から下ってきたRXに追い越された。

 檜垣本で9時をすぎたので、大淀バスセンターまでいかず、そのままこのバス停で、バスが来るのを待つ。

 908ごろ、[2]洞川温泉の方向幕を出したRXがやってきた。さっき追い越されたRXだ。運転者は僕の友人で、こちらを見て???という表情をしている。

 「はいどーぞー」のマイク放送で、車内へ招かれる。檜垣本から乗ってきたのが、意外だったようで、「どっから乗ってくるんやー?」と笑っていた。昨晩は、洞川泊まりで、朝一番の725発で、大淀バスセンターに下りてきて、この便でもう1往復して終わりとのこと。

座席下のチェーン
◆最前席にチェーンがつみこまれていた


 先頭のかぶりつき席にはタイヤチェーンが積み込まれていたので、そのひとつ後ろに座る。乗客は僕一人。今日の天川は積雪があってタイヤチェーンをまかないとだめらしい。笠木から上で凍結しているので、黒滝案内センターでチェーンを巻くと友人は言った。

 下市口駅到着。駅前のりばにバックでバスをすえつける。4分ほど停車。2名乗車。

 下市町内の微妙にせまい道を抜け、下市中学校から、しばらく2車線の国道を走る。岩森・下市温泉に寄るが、まだ営業時間前なので乗降なし。岩森を出て旧道に入ると、路面は乾いているものの、路側にはところどころ残雪が出てきた。栃本口で一人下車。

 広橋峠を越え、国道に戻る。黒滝村に入ると、狭隘区間が出てきて、対向車をうまくかわしながら進む。年末のためか大型車の対向はなく、その分走りやすそうだ。

狭隘区間での対向
◆狭隘区間での対向シーン


 黒滝案内センター到着。友人は、「チェーンを装着しますので発車までしばらくお待ちください」と一言放送を入れ、ゴム手袋をはめて早速作業に取り掛かった。車内で待っているのもどうかと思い、降りて装着作業を見る。

チェーン装着1
チェーン装着2
◆黒滝案内センターでチェーンを装着


 後輪の外側に巻くそうで、チェーンを2つ持って出ると、早速タイヤに上からチェーンをかぶせる。かぶせたら、後ろへ少しバック。チェーンの両端をしっかりつなぎ合わせ、最後にバンドでチェーンの端を張って完成。普通車のチェーンを巻くのと同じ要領だ。このあいだ10分ほど。

 作業が終わるとすぐ発車。チェーンをじゃりじゃり言わせながらゆっくり進む。笠木を出ると、路面があやしくなりはじめ、上笠木付近では、スリップして事故を起こしている現場を2件見かけた。1件目は警察の現場検証中で、事故車が2台停車中。2件目は、自損のようで、路側の溝にはまっており、JAFがきて、救援中だった。冬の吉野をあなどると危険である。

事故1
事故2
◆上笠木付近でスリップ事故2件

凍結路
◆笠木トンネル-新川合トンネル間 凍結している



 新川合トンネルを出ると天川村。天川川合の交差点を左折。ここからは、自分にとって初めての区間だ。国道309号と別れて県道を登っていく。急に積雪の量が増え始め、とうとう圧雪路となった。友人はいっそう緊張した面持ちで、RXを操る。

中越1
中越2
◆圧雪状態でしかも狭隘路 コンディションは最悪だ



 トンネルで虻峠を越えると、そこはすっかり雪国。鉄道なら、上越線や上越新幹線で、高速道路なら、関越トンネルで上越国境を越えたのと似た感覚だ。本当にここは奈良県なのか?まさに「ありえへん!」と叫びたくなる光景が広がっていた。

虻峠を越えて
◆虻トンネルを越えるとそこは「雪国」だった



 RXは、圧雪路の上をゆっくり走り、1040ごろ、やっと洞川の町の中に入った。右手にバスの案内所のような古い建物と、転回場が見えると、そこが終点の洞川温泉だった。しかしわずか1時間半走っただけで、こんな雪国のようなところに来るとは思わなかった。

○洞川の温泉と乗務員宿泊所



洞川乗務員宿泊所
◆終点の洞川温泉 バスの後ろの建物が、きっぷうりば兼乗務員宿泊所



 乗客を降ろすと、1225の折り返しまで休憩となり、友人は僕と雑談しながら、タイヤチェーンの点検をしている。すぐ近くに日帰り温泉施設の洞川温泉センターがあるそうなので、ちょっと行ってみることにした。友人は、案内所の建物の裏に設けられた入り口から、休憩室に入っていった。洞川での泊まり勤務だったため、持参した弁当で昼食をとったあと、昨晩宿泊した荷物を片付けたり、掃除したりするそうだ。入り口には、「奈良交通洞川宿泊所」と書かれていた。

洞川の町並み
◆洞川の町並み すっかり雪景色



洞川宿泊所2
◆洞川の町並みその2 橋から下流側を撮影 右に見えるのはバス乗り場





 僕のほうは、雪道を歩いて、洞川温泉センターに向かった…のだが、年末のため休業していた。やられたぁ…。これはまた日を改めてたずねなければ。

 仕方ないので、バス乗り場の前の食堂に入り、昼食とした。そのあと、12時過ぎまで周辺をうろうろして時間をつぶした。

○帰りは観光客を乗せて

 12時をすぎると、ポツリポツリと待合室に乗客が集まりはじめる。洞川温泉に泊まっていた観光客のようだ。こんな年末でしかも冬の寒いときでも洞川に観光しに来る人がいるのだ。洞川といえば夏というイメージが自分の中にあっただけに、意外な感じがした。

 1210ごろに友人が出てきて、乗降口のドアを開ける。僕を含めると12、3名乗車したと思う。

 1225、定刻にRXは大淀バスセンターに向けて出発。圧雪路を走り始める。虻トンネルを抜けると、道幅がせまくなり、勾配のきつい下り坂とカーブの連続しかも圧雪と悪条件が重なる。友人も本当に緊張した表情をしている。ここで運転操作を誤ると、大変なことになるので、責任重大である。

 天川川合まで下ってくると、路面に雪はなくなり、笠木トンネルを抜けると、路面はすっかり乾き、スリップの危険もなくなった。友人はバスを、黒滝茶屋のある笠木休憩所(降車指定地)に停車させると、チェーンをはずす作業を始めた。チェーンをつけたりはずしたり、本当に冬は大変である。友人は、スタッドレスはかしてくれたらいいのに…とぼやいていた。

 チェーンをはずすと、RXは通常の走りに戻り、遅れを取り戻すように、少し速度を上げる。黒滝案内センターでも、いつもなら少し時間調整で停車して、その間に運転者は一服するものだが、今回は遅れているので、乗降がないのを確認すると、のりばに停車せず、駐車場をすぐターンした。

 RXはそのあと順調に走り、下市口駅には定刻で到着した。観光客はここですべて降りてしまい、車内には自分と地元の常連さんらしき方が2人の計3人だけになった。時間調整で3分ほど停車したあと、岡崎町で一人下ろし、そのあと、少しだけ渋滞につかまって、終点の大淀バスセンターには、1355ごろ到着した。ダイヤに余裕があるのか、タイヤチェーン着脱作業による遅れは回復していた。

 僕は最後に、友人に「おつかれさん」と声をかけ、バスを降りた。このあと、バスを洗車・掃除して、売上金を清算したりして今日の乗務は終了という。

 洞川にははじめていったが、本当に貴重な体験ができた。ただ、運転する友人のほうは、雪道の運転に本当に苦労していた。おつかれさま。



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