八木駅から路線バスの旅




 2002年 8月 4日の旅日記です。



 久々に、バスにでも乗ってみようと思い立ち、エヌシーバス吉野営業所に勤務する友人に電話で、今日の行路を確認。友人の今日の乗務行路は、下記のとおり。

 大淀バスセンター(吉野営業所)649->(88系統・国樔経由)->757湯盛温泉杉の湯806->(85系統・国樔経由)->955八木駅1030->(75系統・樫尾経由)->1200湯盛温泉杉の湯1306->(85系統・国樔経由)->1455八木駅1530->(75系統・樫尾経由)->1700湯盛温泉杉の湯->(回送)->大淀バスセンター(吉野営業所)

 つまり湯盛温泉杉の湯(川上村)〜八木駅を2往復する行路である。午前中は用事があったので、八木駅1530発の75系統・樫尾経由・湯盛温泉杉の湯行きに乗車することにした。

 この八木駅〜湯盛温泉杉の湯間のバスは、大体1時間に1本運行され、ほとんど国道169号線を走る。樫尾経由だと、橿原市小房交差点から終点の湯盛温泉杉の湯まで169号線をひたすら走る。しかもただ単に、往復しているのではなく、終点湯盛温泉杉の湯で、北山方面へ向かうバスに連絡しており、川上村・上北山村方面への連絡バスとしての重要な使命を持っている。

 15時過ぎ、八木駅のバスのりばに行ってみると、ちょうど杉の湯からやってきたバス(日野レインボー)が待機中だった。そのバスの前扉付近で友人が喫煙して休憩中。バスの一番前の客席におじゃまして、今日の様子などを聞く。169号線はすいているし、乗客もいつもより少なく、定刻より遅めに発車しても、やや時間をもてあまし気味とのこと。169号線は川上村の伯母谷付近の崩土 のために通行止となっており、交通量が少ないのはその影響かも。

 八木駅のバスのりばは、最近ひとつになったため、順番に1台づつしか客扱いできなくなっており、25分発の五條バスセンター行きが発車したのを見計らって、すぐに27分発の八木耳成循環がバスのりばにやってくる。僕の乗る、1530発のバスもエンジン始動。

「ぼちぼちいくか」

 友人は、緊張した仕事の顔になり、バスを八木耳成循環の後ろにつける。八木耳成循環が発車し、やっとバスのりばへ前進。すぐ乗車口の扉を開ける。

「お待たせいたしました。大淀バスセンター・上市駅・樫尾経由、柏木連絡、湯盛温泉杉の湯行きです!!」

 友人のマイク放送が響き、乗客が乗り込む。10名ぐらいのっただろうか。すぐに発車時間となり、

「大淀バスセンター・上市駅・樫尾経由、柏木連絡、湯盛温泉杉の湯行き発車します。扉が閉まりますからご注意ください!!」

の放送で扉を閉め、警笛一声、右指示器を出し指差確認の上、発車。ちょっとあわただしい。

「動きます。ご注意ください。」

というマイク放送も入った。この放送は友人オリジナルだ。ほかのバスでは聴いたことがない(でも最近はよく聞く)。この先も停車して発車する毎にこの放送を一言入れていた。友人の仕事に対する熱心さ、几帳面さが 現れている。

 ここからはもう雑談はできない。横に添乗して仕事の様子を観察することにした。

 テープ放送が始まる。

「お待たせいたしました。ご乗車ありがとうございます。75系統・大淀バスセンター・上市駅・宮滝・樫尾経由、湯盛温泉杉の湯行きでございます。柏木方面へお越しのお客様は終点、湯盛温泉杉の湯で柏木行きにお乗換えください。次は橿原市役所前でございます・・・・。」

 このバスは終点で柏木(川上村)行きに接続することになっている。終点まで行って更に乗り継いで行きたくなるが、時間が無いのでそれはやめておく。

 八木駅のロータリーから24号線に出る信号は1回待ちで通過。橿原市役所前・医大病院前は乗降なし。そのまま四条交差点(橿原警察の前)へ。

 通常はここで左折して近鉄の陸橋を越えるのだが、8月中ごろまで、橋梁の架け替え工事が行われており、この日は東向き(桜井方面)が、通行止めになっていた。このためこの橋を渡るバス路線は、迂回運転となっており、四条交差点を橿原神宮方面に直進、一番初めの信号を左折して、近鉄橿原線をアンダークロスし、小房のファミリーマートの交差点に出るように変更され ていた。

 小房で、5名ほどのグループを拾い、ここから169号線を南下する。見瀬あたりまでは、両側にユニクロ・オークワなどの店舗が立ち並んでおり、車の流れも悪い。30km/hぐらいで走ったり止まったり。久米町東で女性が一人下車。

「ありがとうございました。」

 友人は、笑顔で丁寧に頭を下げる。疲れたわ、と言いながらも、乗客の前ではそんな表情は見せない。もともと、友人は人がいいので、こういうお客様相手の商売は向いているのだと思う。

 橿原神宮駅東口ロータリーに入り、小房から乗車したグループが下車。乗車はなし。

 見瀬で母子2人連れを下ろすと、乗降はしばらくなくなった。飛鳥駅を出て、車の流れもよくなり、バス停での停車もないのでちょっとしたドライブ気分である。しかもバスの一番前なので、見通しがよくて気持ちいい。

 壺坂寺口から2車線となると同時に、上り坂となり、追い越し車線から後続車がどんどん追い越していく。奈良交通・エヌシーバスでは、安全のため、50km/h以上で走行してはいけないことになっており、友人も50km/hを保ちながら運行を続ける。タコグラフで速度が記録されるため、速度違反するとすぐわかるらしい。あとエンジンは2000回転以上、上げてはいけないとのこと。これはエンジンの状態を良好に保ち続けるためらしい。

 芦原トンネルで峠を越え、吉野郡大淀町に入った。今度は下り坂となるので、50km/h出ないよう、排気ブレーキ+エンジンブレーキで慎重に下っていく。芦原を出るとほどなく1車線にもどった。上桧垣本で1人下車。

 八木駅から40分ほどで、吉野営業所のある大淀バスセンターに到着。町営の福祉バスに乗り換えるというおばさんが一人下車。吉野地区のバスの運行拠点だが、乗車はなし。すぐ発車。

 土田交差点を左折。近鉄吉野線と吉野川に並行して走る。このあたりは道幅がやや狭く、両側に昔からの家が立ち並んでいるし、電柱も道路の端にはみ出しているため、大型車同士の離合は気を使う。バスはトラックより幅が広いので余計走りにくいだろう。ちなみに、今乗車している日野レインボーは、全長が7mで一応マイクロバス並みの長さだが、幅は普通の大型バスとほぼ同じである。

 国道から左折して、急な坂を上がり、上市駅へ。できれば終点まで行きたかったが、終点までいくと遅くなってしまうので、ここで降りることにした。友人にこの先も気をつけて・・・と声をかけて降りる。発車時、敬礼をして見送る。友人も敬礼して応答。警笛一声、友人の運転するレインボーは上市駅を発車していった。八木駅から上市駅まで55分のドライブだった。

 僕はこの後近鉄で帰宅したが、八木まで1時間かかった。しかも橿原神宮での乗り換え時間が短く、構内をダッシュさせられた。上市駅でバスを降りる際、八木から乗りとおしてさらに先へ行く乗客が2名いたが、なるほど、この乗換えがわずらわしいのか、と納得。しかも、今回のように道路が比較的すいていれば、バスのほうが早い場合もある。ちなみに運賃は、八木-上市だけの場合だとバスのほうが高いが、上市から先、川上方面との場合だと、バスで直通する場合も、上市から近鉄に乗り換える場合も運賃はあまり変わらないそうだ。橿原神宮での乗り換えの有無と運賃の差を考えると、高齢者だと、まずバスで直通をえらぶだろう。

 マイカーの増加・少子化・市街地での慢性的な渋滞による遅れの日常化など、さまざまな要因でバスの利用者は減っており、奈良交通も例外ではない。中南和だと間違いなく不採算路線が多いと思われるが、そんな中、八木駅-湯盛温泉杉の湯間のバスのような鉄道とほぼ対等な立場で運行できている路線は珍しい。いろいろと、大変だろうが、公共交通機関である乗合バスがなくなると困る人も多いだろうし、できるだけ、路線が減らないようがんばってほしいと思う。



バス旅日記メニューに戻る



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送