天川の過疎バスに乗って





 2003年5月25日の旅日記です。

 この日の行程は、

八木駅1157(220系統・下市町岩森行き)1241桧垣本…徒歩…下市口駅1415(7系統・中庵住行き)1548中庵住1710(7系統・下市口駅行き)1843下市口駅

でした。



 吉野郡天川村といえば、何を思い浮かべるだろう。洞川・大峰山、あと、昔の角川 映画「天河伝説殺人事件」の舞台となったことをご存知の方もおられるだろう。実 際、夏にキャンプなどで訪れたことがある方もおられるだろう。

 今回は、その天川村を走る路線バス、しかも洞川ではなく「庵住(いおすみ)」と言 う所に行くバスに乗ってみた。運転者は僕の友人で、あらかじめ乗務するダイヤを確認して出かけた。

 11:40すぎ、八木駅のバス乗り場に着いた。すでに、友人の乗務する、11:57発、 221系統・下市町岩森(下市温泉)行きのバスがきていた。今日のの友人の行路は、この あと、岩森から下市口駅まで回送、そのあと、下市口駅14:15発の7系統、中庵住行 きを担当する。僕は、この友人の行路に同行し、まず下市まで行って、昼食を済ませ てから、中庵住を往復する予定にしている。

 友人は、案内所の係の人と談笑中。とりあえず、友人にあいさつして、吉野仕様のRX に乗り込む。すでに乗客は5名。僕は後ろから2列目に座った。意外とこの席は足元が 広い。

 医大病院で2名下車。その次の小房で2名下車し、入れ替わりに2名乗車・・・と、 橿原市内は、結構乗車がある。橿原神宮駅東口では、飛鳥方面のバスを待っている乗 客からの問い合わせに友人は親切に応対し、わざわざバスから降りて、バス停の時刻 表を見てあげていた。

 壺阪山駅で乗客は、僕とおばあさんの2名だけとなり、そのまま芦原トンネルを越 える。169号線はこの時間だとすいており、時間通りに運行できていたようだ。

 早着したようで大淀バスセンターで、小休止。友人は、ちょっと調子悪そう。とりあ えず財布の中身が少ないことに気づいたので、次の桧垣本で、下車する旨告げてお く。

大淀バスセンター停車中のRX
◆大淀バスセンターで停車中の[221]岩森行き

 時間となり、五條バスセンター行きと同時発車。桧垣本で下車し、いったん友人と 別れた。バス停近くのローソンで、お金を下ろそうとしたが、ここのローソン、ATM がなかった。失敗した・・・。仕方ないので、岡崎町にある南都銀行までてくてく歩 いた。

 ローソンでおにぎりとお茶を買って、近くの吉野川の川原で腰を下ろしてのんびり 昼食。そのあと、下市口駅まで歩き、駅前のツタヤで時間調整。HYのCDを買ってし まった。

 14:10過ぎ、駅東側の操車場から、友人の運転するRXが出てきて、駅前の乗り場に バック付けした。地元客らしい男性1名と、登山の装備をしたおばさんグループ5名と 一緒に乗車。僕は、また後部の同じ席をキープ。乗客の動きなどを観察する。

 14:17、7系統・中庵住行きは、2分遅らせて、下市口駅を発車し た。

 千石橋を渡って、下市町内に入る。国道309号線なのだが、道幅は狭く、両側には 家の軒先が迫る。大型車同士の対向は、どちらかがとまってゆずらないと対向出来な い。下市本町から、国道を外れて、さらに狭い県道に入る。下市本町-下市中学校前 間は、2つのルートがあり、ひとつは国道をたどる下坂経由ルート、もうひとつはこ の7系統が走る寺内経由と呼ばれる県道ルート。こちらは、見通しの悪いところが多 く、慎重に走る。

 下市中学校から国道309号に合流。しばらく2車線の状態のいい道を走る。原谷口で 男性下車。下市温泉に寄り道し、再び国道に行くのかと思いきや、国道からそれて、 バスは旧道へ入っていく。古い待合室のある栃本口を過ぎて、国道と交差するが、バ スは国道に行かず、さらに旧道のくねくねした峠道をゆっくり進む。

 広橋峠で峠の頂上となり、ここからくだりとなる。国道の旧ルートと合流せず、バ スは、左側の急な狭い坂を下っていく。以前は、国道の旧ルートを進んで行ったらし いが、地元からの要望で、集落のある庄屋辻にバス停を新設し、そちらを経由するよ うになったという。

 庄屋辻を出てやっと国道309号に戻る。しばらく新道を走るが、高野橋によるため に、また狭い旧道に入る。そしてすぐまた新道に戻る。結構めんどくさそう。

 宮前橋を過ぎると、309号線のネックである、隘路となる。シーズンになると地獄 を見る区間だそうだ。とりあえず、対向車に気を使いながらゆっくり進む。やたら カーブが合って見通しが悪い。それでも対向の普通車が高速で突っ込んできてひやひ やする。友人は時々無線のマイクを取り、「NTTから河合」という感じで、現在地を 周辺の大型車に報告している。もし、対向から無線を持った大型車が来た場合、応答 があって、退避できるところでどちらかが待つというわけ。この日は1台だけ対向が あり、こちらのほうが広いところで退避した。

 隘路区間を脱出すると、程なく黒滝案内センターに到着。ここは道の駅になってお り、売店・トイレなどがある。黒滝村内連絡の、中戸行きハコMR44号車が、接続待ち をしており、ここで時間調整のため5分ほど停車。僕と友人は、トイレへ。バスに戻 ると、友人は、MR44号車の運転者と無線で雑談を交わし、「また帰りもお願いしと きますぅー」といって交信終了。定刻になったので発車となった。

 ここからはひたすら状態のよい道を走る。登坂車線を登りつつ、黒滝村の最後の停 留所、上笠木を過ぎると、ほどなく、新笠木トンネルに突入した。非常に快適なトン ネルで、このトンネルと、もう一本新川合トンネルが完成したことで、天川村は非常 に近い存在となった。新笠木トンネルは、1693m、新川合トンネルは、2751mあるそう だ。50km/hのバスで走ると非常に長く感じた。

 トンネルを抜けると程なく、天川川合バス停に到着。おばさん5人グループはここ で下車した。乗客は僕一人となった。

「ここで(実質)営業終了やね」

と、友人。それでも、ここから、自由乗降の電子オルゴール(峠のわが家)を流し、 ちゃんとバスを走らせる。川合の交差点を右折し、大塔村阪本へ向かう県道に入っ た。ところどころ改良工事が行われているものの、ほとんどがバス1台がやっとの隘 路。友人は前方を注視して、慎重にRXを走らせる。時々、対向車があるので、その たびにうまくすれちがっていた。

狭い道で対向車
◆対向車がやってきた 対向困難なのでバスが後退してゆずる(上栃本)

 誰も乗客がいないのをいいことに、あまり見ることのない、補助いすを広げさせて もらった。さすがに補助いすということで、座り心地はあまりよくなかったが・・ ・。

 途中何本かつり橋を見ることができた。民家は見られないが、きっとつり橋の向こ うに何件か民家があるのだろう。

 川合から20分ほど走り、乗客のないまま、終点の中庵住に到着した。中庵住には小 さな車庫があり、バス1台が入るようになっていた。横には乗務員の休憩室もある。

 もっとも、友人の場合はほとんど休憩室は使わず、バスの車内で休憩するそうだ が。

 折り返しまで1時間あるので、差し入れに買ってきた缶コーヒーをわたし、運賃箱 の上に広げたビスケットを食べながら、友人にいろいろと話を聞く。さっきまで頭 痛で調子が悪かったが、営業所で薬をもらって飲んだらすっきりしたとのこと。安心 した。

 休みがほとんどないけど、好きなバスに乗務できるのは楽しいということ。早く奈良交通に上がって、大型バスに乗務したいということ。吉野営業所は のんびりして、いい職場だということ・・・。

 1710になったので、友人は下市口駅行きのバスを発車させる。乗客は僕一人。

 薄暗くなった山道を、友人はRX14号車を走らせる。僕がいなければ、友人一人、 孤独にひたすらバスを走らせなければならないところだった。

 途中、天河弁財天社へ寄るために、県道を外れ、マイクロバス1台分がやっとの幅 の細い橋をわたった。行きも通ったが、すごい道である。大型バスだと絶対無理だ。

未改良の県道
◆未改良の県道を行く 山間部の県道・国道にはこのような区間が多い(栃本付近)

 再び県道に戻り、狭い道をやっと天川川合まで戻る。ここからは国道307号線。乗 客もなく、そのまま新川合トンネルに突入し、天川村に別れを告げる。友人は、速 度を55km/hにあげる。

 「早着してしまうんやけど、後ろが詰まるからね。」 といってたら、後ろから、大型の観光バスが追いついてきた。  「うぁ、観光バスきたぁ・・・。どこのやつかな?」 友人が言うので、僕が後ろの窓に行ってどこのやつか確認。おなじみのカラーに 「奈良交通」の文字が読み取れた。日野セレガだ。  「あんたとこのバスや。」 

 貸切は、時間に関係ないので、かなり飛ばすそうだ。

 新笠木トンネルを抜けた。早すぎるので、「笠木休憩所です」のテープ放送の後、 黒滝茶屋の前の広いところに停車。ちょうどここは、自由乗降の降車指定地「笠木休 憩所」となっている。後ろから来た貸切車は、なにわナンバーの京阪支社の車で、黒 滝茶屋にバックで入り、休憩をとるようだった。

黒滝茶屋に入る奈良交通の貸切車
◆黒滝茶屋に入る奈良交通の貸切車(笠木休憩所)

 黒滝案内センターに到着すると、中戸からきたMR44号車が待機中。無線で、「乗り 継ぎなしですわぁ」と連絡を受け、「気をつけて、おねがいしときますぅ」と言って 交信終了。すぐ発車。

MR44号車と接続
◆中戸からきたMR44号車と接続 ハコMRで旧塗装の車両は44号車を残すのみ (黒滝案内センター)

 黒滝案内センター発車後、すぐ、笠木行きのRXと対向。その後、隘路区間を抜け て、広橋峠の手前で、今度は、専属運転者の乗務する中庵住行きのRHと対向。そのた びに無線で一言二言状況を連絡しあう。

専属RHと対向
◆中庵住行きのRHと対向 (高野橋-庄屋辻間)

 広橋峠から旧道の峠道を下るとき、珍しい奈良交通の「ブレーキテスト」「エンジ ンブレーキ第三速」標識が現れた。もちろん、いったん停止。サイドブレー キを引き、利くことを確認。その後、排気ブレーキ併用で、三速で急な坂を下った。

 岩森から、307号線に戻り、RXは、終点に向けてラストスパートを・・・といいた いところだが、時刻表どおりに走らないといけないので、30〜40km/hで、のんびり走 る。原谷口あたりで、洞川温泉行きのRXと対向。さっきから、3本のバスとすれ違っ た。笠木までなら、バスの本数は結構あるのだ。

 狭い下市町内を抜け、千石橋を渡ると、RX14号車は、終点下市口駅に到着した。始 発から終点まで帰りは貸しきり状態で、非常に贅沢な旅をさせていただいた。

 機会があれば今度は洞川方面にも行ってみたい。できればシーズンを避けていきた いが・・・。

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